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Withコロナ時代の成長戦略

顧客主導で推進する事業の再構成/リインベンションの実践

IBM Future Design Lab.が提唱する事業の再構築/リインベンションの推進と、次世代の顧客リレーションモデルの解説

コロナ禍による社会停滞が3年目に差し掛かり、事業マネージメントの最前線はこれまでの回復戦略から事業全体の再構成/リインベンション戦略に移行している。今後も大きく変容し続ける市場環境の中で長期的な競争力と成長力を維持する自社事業の再構成/リインベンション戦略を検討する際には、経営者は自社事業の観点だけでなく、周辺の動向も踏まえた複眼的な視点から事業の再構成を推進する必要があるはずだ。中でも、市場の最終判断者である生活者の動向把握は重視すべき視点である。

こうした問題意識から、IBM Future Design Lab.は2020年8月と2021年9月の2回、独自調査を実施。2年間の定点調査を実施したことで、市井の経済意識や生活価値観など、コロナ禍により大きく変容する生活者の姿を捉えることができた。また、その中で、7割以上(Top2Box※)の生活者が“リアルとデジタルが融合した体験”を求めており、約半数(Top2Box)が商品やサービスの継続的な高度化(生活者にとってのDX)を期待していることも明らかにすることができた。
※ Top2Box:5段階選択などの質問形式で、ポジティブな上位2つの選択肢の合計を意味する

金銭的余裕には、約半数がないと回答。時間についても4割以上が明言せず

DXによるサービスの高度化を受容するのは44.4%。拒否層は、わずか11.7%

こうした生活者の意識の変容は、コロナ後に新しい市場が誕生することを示唆している。我々、IBM Future Design Lab.では、調査結果の分析を行うことで生活者の変容や期待を洞察し、コロナ後には企業とユーザーが直接結びつき、その関係性の強さが社会価値やマーケット・シェアに直結する“エンゲージメント商圏”の拡大が予測されると結論づけている。そして、コロナ後に訪れる新たな商機、我々がエンゲージメント商圏と名付けた市場で勝ち抜くためには、コロナ禍で変わった生活者が望む体験価値の提供が必須となることを発信し続けている。

2021年9月に実施した最新の調査結果からも、社会問題への意識の高まり、意志決定の効率化への強い期待を明確にすることができた。こうした意識の高まりに連動した態度変容のポイント(UXリインベンション)に注目することで、今後、生活者が求める体験価値創造のポイントが見えてくる。また、同時に、コロナ後の事業変革の中で、顧客リレーション戦略(UIUX戦略の高度化/サービス・ヒューマンインターフェース™思想の実践)が重要な役割を担うことも明らかになってくるのだ。

知的関心は総じて高いが、最大の関心/懸念は「自身の暮らしの継続性」

サービス・ヒューマンインターフェース発想™の概念図

今後、テクノロジーが一層、生活の場に浸透していく上では、早期に生活者の視点から事業成長に必要な争点を見出すことは欠かせなくなる。よって我々は、新たな発想で、事業と顧客のリレーションの高度化を推進する必要がある。もし我々がこのような問題意識を得意先企業と共有し、より成長性が期待できる事業の再構成/リインベンション戦略を推進できれば、テクノロジーは、真の意味で幅広く生活者に受け入れられ、社会文化として根付くことができる。テクノロジーの民主化は、もう間近に迫ってるのだ。


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著者について

髙荷 力, 日本アイ・ビー・エム株式会社, IBMコンサルティング事業本部 IBM Future Design Lab. 所長/CVO 顧客洞察スペシャリスト

発行日 2022年3月2日